百厘経済政策研究所

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日本の現在と将来について(1)

「経済優先」は誤り?

 現在の日本経済は苦境の真っ只中にあります。社会保障費の増大に伴い社会保険料など国民負担は増加する一方で、平均賃金は横ばいを続け、現状で先進国の中で下位に沈んでいます。その結果、可処分所得は減少傾向と言えます。

 例として30歳の会社員Aさんの可処分所得が現状でどの程度なのかを見てみます。企業から見て、Aさんを雇用するためのコストが月に30万円(給与額面としては約26万円)だとします。このとき、毎月Aさんの銀行口座に振り込まれる金額は、社会保険料、所得税、住民税が控除され、20万円を少し超えるくらいの金額になるはずです。つまり現状でも企業負担額の内、30%以上は国や地方公共団体へ納付されていて、Aさんの可処分所得となるのは残りの20万円強ということになります。

 

 この現状でも十分に苦しいと思いますが、さらに考えなくてはならないのが、日本はこれから、他国に先がけて超が付くほどの高齢化社会への道を進んでいくということです。

 例えば国立社会保障・人口問題研究所の推計では、労働年齢(15歳~64歳)人口と高齢者(65歳以上)の2020年から2060年までの推移は次のようになっています。

労働年齢:約73百万人=>約44百万人(40年間で約30百万人近く減少)
高齢者 :約36百万人=>約34百万人(40年間で約2百万人減少)


 つまり年金や健康保険などの社会保障に関連する支出は今後ほとんど減少しない一方で、その大部分を負担する労働年齢人口は3千万人近く減少し、2060年には、現在の約60%にまで縮小するのです。

 この状況下で、多くの国民が現在と同程度の可処分所得を獲得し、それと同時に社会を維持していくための政府支出を可能とする歳入を確保しようとすれば、最低でも現在と同程度の経済規模(GDP)を維持する必要があります。
 なぜなら、GDPとは日本国内で生み出される付加価値(事業活動によって新たに生み出された経済的価値)の合計であり、その付加価値が、給与、税金等、企業利益などに分配される構造になっているからです。

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 言い換えると、もしもGDPが大幅に減少すると、たとえ平均給与は一定だったとしても、国家歳入を確保するための増税等を勘案すると、平均可処分所得(個人が自由に使えるお金)は大幅に減少するということです。そしてそこまでしても国家歳入の減少は避けられず、社会保障水準は大幅に低下します。
 

 このように日本は現在、そこそこ危機的状況にあるということをご理解いただいた上で、次回はいかにしてこの状況を打開していくかという点について考えていきます。

 

日本の現在と将来について(2)